2011年06月29日

 <いのちをいただく>

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「いのちをいただく」

西日本新聞社より

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その絵本の帯に、一人の名も無い主婦のメッセージが書かれていた。 


「朗読を聴いて、うちのムスメが食事を残さなくなりました」

絵本に食肉加工センターの「坂本さん」という人が登場する。

実在の人物である。

坂本さんの職場では毎日毎日たくさんの牛が殺され、

その肉が市場に卸されている。


牛を殺すとき、牛と目が合う。

そのたびに坂本さんは、

「いつかこの仕事をやめよう」と思っていた。

ある日の夕方、牛を荷台に乗せた一台のトラックがやってきた。

「明日の牛か…」と坂本さんは思った。

しかし、いつまで経っても荷台から牛が降りてこない。

不思議に思って覗いてみると、10歳くらいの女の子が、

牛のお腹をさすりながら何か話し掛けている。


その声が聞こえてきた。

「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ……」

坂本さんは思った、
(見なきゃよかった…)


女の子のおじいちゃんが坂本さんに頭を下げた。


「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。

だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。

ばってん、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。

明日はよろしくお願いします…」 


(もうできん。もうこの仕事はやめよう)

と思った坂本さん、明日の仕事を休むことにした。

家に帰ってから、そのことを小学生の息子のしのぶ君に話した。

しのぶ君はじっと聞いていた。

一緒にお風呂に入ったとき、しのぶ君は父親に言った。

「やっぱりお父さんがしてやってよ。

心の無か人がしたら牛が苦しむけん」

しかし、坂本さんは休むと決めていた。

翌日、学校に行く前に、しのぶ君はもう一度言った。

「お父さん、今日は行かなんよ!(行かないといけないよ)」

坂本さんの心が揺れた。

そしてしぶしぶ仕事場へと車を走らせた。

牛舎に入った。


坂本さんを見ると、

他の牛と同じようにみいちゃんも角を下げて威嚇するポーズをとった。

「みいちゃん、ごめんよう。

みいちゃんが肉にならんとみんなが困るけん。

ごめんよう」

と言うと、みいちゃんは坂本さんに首をこすり付けてきた。

殺すとき、動いて急所をはずすと牛は苦しむ。


坂本さんが、

「じっとしとけよ、じっとしとけよ」

と言うと、みいちゃんは動かなくなった。


次の瞬間

みいちゃんの目から大きな涙がこぼれ落ちた。

牛の涙を坂本さんは初めて見た。


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大切な命をいただいて

生かされていますね。


心を込めて

「いただきます」や「ごちそうさまでした」と言います。


いつも ありがとうございます。



Posted by 海花星空 at 11:03│Comments(0)
 
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